地域課題の解決に挑む「移動スーパー:とくし丸」(前編)

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

今回は、地域課題の解決に挑む「移動スーパー:とくし丸」にスポットを当ててみたいと思います。

私が「移動スーパー:とくし丸」を知るきっかけとなったのは、その創業者である住友達也氏(以下、住友氏と言う)の著書「移動スーパー とくし丸のキセキ」 《西日本出版社》という本との出会いからです。

「移動スーパー …」というそのタイトルに目を引かれた私は、表紙をめくり、その導入部分を読んだだけで、住友氏のその着眼点の凄さに驚かされたのです。

※以下、太字は住友氏の著書「移動スーパー とくし丸のキセキ」からの引用文です。

「移動スーパー」???

まずは移動スーパーそのものについてお話させてください。

「移動スーパー」とは、冷蔵施設を配備した軽トラック等の荷台に、数百の食品等を積み込み、お客さま宅等に出向いて販売する移動販売車のことです。

みなさんは、「移動スーパー」というワードから、何を想像されますか?

私の頭へ真っ先に浮かんで来たのは「魚屋さんの移動販売」でした。私の地元では、20数年前まで、魚屋さんが車で移動販売をされていました。その車には、もちろん魚だけでなく、他の食品も積んであったのです。

まさに、「移動スーパー」のハシリですね。

でも、今は当時の魚屋さんのような移動販売車を見かけることは、ほとんどありません。そうなると、買い物になかなか行けない地域の人々は困ってしまいます。

時を経て、2012年。

「買い物難民を救いたい」という強い思いから誕生したのが、「移動スーパー とくし丸」なのです。

「移動スーパー とくし丸」とは…?! (同書籍 P4

では、「とくし丸」は、どのような「移動スーパー」なのでしょうか。同書籍の「まえがき」で説明されていますので、そのまま引用いたします。

 最初に、我々とくし丸本部が地域のスーパーと契約し、販売パートナーと呼ばれる個人事業主が車両を購入し、その地域のスーパーと契約する。そして売上げの17%が販売パートナーの収入となり、さらに「プラス10円ルール」という手法によって、利益率を大きく改善させた。これはスーパーの店頭価格に+10円するというもので、お客さんに負担していただく+10円を、それぞれ5円ずつ、スーパーと販売パートナーに還元させるという仕組みである。

また、販売パートナーは商品をスーパーから仕入れるのではなく、販売代行するという形になるので、仕入れはゼロ。売れ残った生鮮食品も、夕方5時までに拠点店舗に帰って返却すればよいというルール。

フランチャイズとは異なる仕組みやルールという着眼点の凄さに驚きました。この仕組みやルールは、異業種から参入した販売パートナーでも収入を得やすい体制だと言えるでしょう。また、視点を変えるのであれば、住友氏は自身の利益が減ってでも販売パートナーのハードルを下げ、サービスを展開したがっているようにも感じ取れます。

「とくし丸」の事業目的(同書籍 P98

では、なぜ自身の利益が減ってでもサービスを展開したいと思っているのでしょうか。その原動力のヒントを得るために事業の目的に注目してみましょう。

とくし丸の事業目的は、①買い物困難者の支援、②地域スーパーの売上支援、③雇用の創出。

この3点である。

創業者である住友氏は、「とくし丸」の事業目的を上記のように掲げておられます。

では、それぞれについて、見ていきたいと思います。

①買い物困難者の支援

住友氏が「とくし丸」事業を始める原点になったものです。

そもそものきっかけは、徳島県の田舎に住んでおられる高齢のご両親とのお話の中、「ここら辺みんな、買い物行いけんで困っとーわよ。」という母親の一言からだったそうです。

お袋に、よくよく話を聞いてみると、周辺にも買い物に困っているお年寄りがたくさんいることが判明したそうです。

私の田舎もそうなのですが、田舎では車が必需品になります。

歩いていける距離にお店があるという人は、ほんの一握りです。公共交通機関を使うにしても、その乗り場に行くまでに相当歩かないといけない等でとても不便なのです。

買い物に行くためにも車は必需品となり、車に乗らなくなれば、即、「買い物難民」となる可能性が高くなってしまいます。

このような地方の実情は、おそらく日本中どこでも同じような状況だと思われますし、まして、これからの日本は益々高齢化が進行する時代に突入しています。

住友氏は「買い物困難者への支援の仕組みづくり」は急務であり、早急に取り組まなければならないという強い思いで、この「とくし丸」事業を立ち上げるにいたったのです。

②地域スーパーの売上支援

「とくし丸」の販売パートナーは、その地域に存在するスーパーの商品を販売代行します。

「とくし丸」が出向く先は、今までそのスーパーに足を運べなかったお客さまのところ、すなわち、そのスーパーにとっても新規のお客さまのところということになります。

お客さまが増え、「とくし丸」の売上げが伸びれば、その地域のスーパーの売上げも伸びるということです。

そして、「とくし丸」本部へのロイヤリティ(あるいは会費)は「テイガク制」という画期的なもので、地域スーパーの頑張りが報われるような仕組みになっています。

ロイヤリティ(あるいは会費)として提携先のスーパーから頂戴する金額は、とくし丸1台につき毎月3万円のみの固定額と決められているそうです。

住友氏曰く、「テイガク制」は、「定額制」でもあり、「低額制」でもあるというわけです。

この仕組みだと、売上げが伸びても、本部に納める金額は一定額なので、その残りはスーパーの利益とすることができます。

また、前述の「プラス10円ルール」によっても、スーパーの利益を後押しする仕組みになっているのです。

「提携先のスーパー」と「そのスーパーまでの距離が遠い地域住民」の橋渡し役を担っていて、その地域内で経済を循環させている感じが素敵だなぁ、と感じます。

③雇用の創出

販売パートナーさんは、個人事業主として事業を始めるわけですから、まさしく「雇用の創出」です。

「とくし丸」の事業をやりたくて、都会から戻って来られる販売パートナーさんもいらっしゃるそうです。

販売パートナーさんの販売車である「とくし丸」の全国の台数は、2022124日現在、949台(「移動スーパーとくし丸」WEBサイトより)ということですので、この台数分だけの個人事業主が生まれている計算になります。

まさしく、地方における雇用創出につながっているのです。

“真”の「買い物をしてもらいたい」

「買い物難民を救いたい」との思いで、立ち上げられた「とくし丸」ですが、今の時代、オンラインショップや宅配サービスなど、お客さまにとって必要なものや欲しいものを直接届けて支援する方法もあったことでしょう。

それなのにも関わらず住友氏はなぜ「移動スーパー」にこだわったのでしょうか。

そこには、単なる「購入」ではなく、「買い物をしてもらいたい」という住友氏の熱い思いが込められています。

私たちは普段、「買い物をする」という言葉を何気なく使っていますが、「買い物をする」という行為は、「必要なものや欲しいものを手に入れるための手段」以外の意味もあります。商品が手に入りさえすればいいということであれば、宅配等で送付してもらえれば、それで事足りるはずです。でも、私たちが「買い物」に求めているものは、それだけではないはずです。

お店に行って、商品を前にしてどれを選ぼうかと迷う時のあの「ワクワク感」。店員さんといいお話等ができ、満足した買い物ができた時のその「充実感」。いずれも「買い物する楽しさ」を無意識のうちに求めているのではないでしょうか。

そのことを住友氏は、同書籍(P30)の中でこう表現されています。

そもそも「買い物」という行為は、生活の中の「お楽しみ」でもある。現物を「見て・触って・感じて・選んで」初めて本来の「買い物」と言えるのではないか。

そして、「食」の商品については、同書籍(P71)の中で、

そもそも「食」は、「その瞬間」なのである。その時「食べたい」と思ったものが、数日後にも「食べたい」とは限らないのだ。

この文を読んで私も強くそう思いました。

人間の身体というのは上手くできていて、今「食べたい」ものには、今身体に不足している栄養分が含まれており、身体が欲する食べ物を食べることで、栄養のバランスを取ることができるようになっていると聞き及んでいます。

よって、今「食べたい」ものを食べるというのは理にかなっているわけです。

「とくし丸」は、3日に一度、お客さま宅を訪問するようになっているので、「食」についても、今食べたいものだけを買えばよく、「買いだめ」の必要はないのです。

ここにも創業者である住友氏の「新鮮な食品を、ぜひ味わってもらいたい」という心遣いが伝わって来ます。

前編のおわりに

このコロナ禍の状況においても、「とくし丸」は売上げを伸ばしています。コロナ禍の今だからこそ、より「とくし丸」が必要とされているとも言えると思います。

今回の前編では「移動スーパー とくし丸」の地域課題解決に向けての取組みについての概要を紹介させていただきました。

次回、後編では、「移動スーパー とくし丸」における①ビジネスモデルの着眼点、②自治体との連携(「見守り隊」等)、③販売パートナーの活躍ぶり等について、お伝えさせていただきたいと思います。


移動スーパーとくし丸 のWEBサイトhttps://www.tokushimaru.jp


次回も、「移動スーパー:とくし丸」(後編)についてです。

 

 

 

 

 

 

 

1つ星2つ星3つ星4つ星5つ星 (まだ評価がありません)
読み込み中...