「新・農業」をデザインする先駆者たち ②

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

先日、本屋さんで 井本喜久 著「ビジネスパーソンの新・兼業農家論」 《株式会社クロスメディア・パブリッシング出版》という本に出会いました。「新・兼業農家論」という思いもつかないパワーワードと遭遇し、目が釘付けになりました。今回は、その本を読んで感じたことをざっくばらんにまとめてみました。

以下、太字は引用文です。

井本氏はどんな人?

本題に入る前に著者である井本氏についてご紹介しましょう。

井本氏は、東京で「インターネット農学校:The CAMPus」の校長をしながら、実家のある広島で農業を営む二拠点生活を実践されています。また、「The CAMPus」の構想段階から著書の執筆までに、なんと全国100人以上のオモシロそうなプロ農家たちに会いまくったのだとか。

序章の冒頭のわずか数行ですが、その行動力の凄さに驚かされました。農業に対する思い入れの深さと強く結びついているからこそできた行動なのでしょう。

新・兼業農家論の定義

著書のタイトルにもある通り、井本氏は「兼業農家」について述べているわけですが、従来の、農業の収入だけでは生活できないから会社勤めもするといった受動的なものではなく、能動的に、暮らしの軸として「農」を取り入れることをおすすめしており、人生のオモシロさは10倍になると唱えています。井本氏は、スマートフォンなどが進化し、ストレスなく複数の活動を自由に選択できる今の時代に合わせた新しい農家のスタイルのことを「新・兼業農家」と定義づけています。

また、井本氏は「農」と「農業」を明確に区別しており、著書の中で次のように定義しています。

 「農業」とは、ビジネスのこと。野菜やさまざまな農作物を栽培して収穫して販売して利益を得るという「仕事」のことだ。

一方、「農」というのは、一種の文化価値のことであり、仕事にする・しないに関係なく、農作物を作りながらの「自然と共にある生活」そのもののことを指す。(同書籍 P12

多種多様な農家人(のうかびと)

著書の中で紹介されている多種多様なプロ農家たちの中から、特に印象的だった3人の“のうかびと”を取り上げてみたいと思います。

「サーフィンをするために海の近くで農業を始めた」“のうかびと”

まず、1人目は、サーフィンをするために千葉県に移住し農業を始めたRYO’S FARM の梁寛樹さん。梁さんの移住は、地域おこし協力隊の募集がキッカケだったそうですが、その後マンゴー農家に弟子入りし、パッションフルーツ農家として独立。独立後1年目より収穫したパッションフルーツを完売させた経歴を持っています。

今でいう「ワーケーション」のはしりですね。自分の大好きな趣味を第一に考えた時、職業として選んだのが「農業」だったのです。私にとって完全に想定外のこの発想は、地方に若者を呼び込む際、とても役立つインパクトの強い考え方であると感じました。

「星付きレストラン専用のハーブ栽培」をする“のうかびと”

2人目は広島県で梶谷農園を営む梶谷譲さん。北米の超エリート園芸学校「ナイアガラ・ボタニカル・ガーデン」で勉強後、2007年に父の農園を引き継ぎました。オーナー就任後、星付きレストランを顧客にするという経営方針で大成功を収めます。

星付きレストランのシェフに寄り添い、各々のオーダーに応じて作物を栽培する人がいること、さらにそのシェフは国内だけにとどまらず、海外からもオーダーがあるということに驚きを隠せません。そして、何と言っても、そのオーダーに応えることができる栽培技術があるというのは本当に凄いことだと感じました。この「“超”マーケットイン」の思考方法は、「新・農業」の取組みについて深い示唆を与えてくれていると思います。

マーケットイン:お客様の声に耳を傾け、困っていることや要求を知り、それらを解決する製品を市場に投入しようという考え方。

「食味にこだわり、昔ながらの農法で米をつくる」“のうかびと”

3人目は茨城県で鹿嶋パラダイスを営む唐澤秀さん。「とにかく美味しい米をつくりたい」という思いで試行錯誤して辿り着いたのが江戸時代(元禄)から昭和30年頃まで続いた水苗代(みずなわしろ)という非常に手間のかかる栽培方法でした。そして刈り取った稲は、一般的な乾燥機(約1日)ではなく天日干し(3週間~2ヶ月)で乾燥させます。これだけの手間暇と時間をかけたお米は格段の美味しさとなるそうです。

私も水の張られた泥々の田んぼに素足を踏み入れる農法の経験をしましたが、一歩ずつ踏みかえて手植えしていく過程において、何とも言えない心の安らぎを感じ、これはきっと「人間は地球の一部であることからやってくるシグナルだ」と悟ったことを覚えています。

「ビジネスパーソンの新・兼業農家論」の中で私が注目するポイント!

「これからの農家は生産者ではなく、ビジネスパーソン」(同書籍 P43

井本氏は、これから農業を始めるにあたって「生産」よりも「経営」を先に学ぶべきだと述べていて、都会でのビジネス経験が豊富な人は農業へ参入できる下地をすでに十分持ち合わせていると紐解いています。

私も、従来の農業から「新しい農業のカタチ」へ変えていくためには、この「経営」視点で行うということが、一丁目一番地に必要なものであり、かつ、とても重要なことであると考えます。

FARM to TABLE」(同書籍 P89

井本氏によると、「FARM to TABLE」という言葉は本来、「食の安全性を確保するため、生産者(農場)から消費者(食卓)まで一貫した安全管理をする」というアメリカ発の価値観を意味するそうですが、「うまくいっている農家は、テーブルのことを理解してる」と言う理由より、この考え方が大切なのは、安全管理という点においてだけではないと思うと提言しています。

私は今まで「マーケットイン」という考え方の重要性は感じて来ましたが、そこからまた一歩進んで、「食卓でどういう風に食べていただいているか」、そこまで思いを馳せることはできていませんでした。

「どのように召し上がっていただくか」まで、「デザイン」することは、これからの「新・農業」へ取組んでいくにあたって、とても示唆に富んだ考え方であるということを痛感させられました。

「身土不二(しんどふじ)」(同書籍 P106

著書によると「身土不二」とは、「人間は土地と切り離せない存在であるため、その土地で作られたものをその場で体に入れるのが一番健康効果がある」という意味のある言葉だそうです。

現在のコロナ禍の状況において、個々人の「健康力」を増すためにも、とても大切な考え方で、まさに今、地元の農業が見直されるべき時なのです。もちろん、農家だけでなく私たち消費者も目先の安さだけにとらわれず、何十年も先の人生を見据えて体にいいものを食べようとする心がけが大切だと言えるでしょう。

おわりに

井本氏が唱える「新・兼業農家論」、いかがでしたか。

「新・農業」へ向けての、その「斬新な着眼点」には目を見張るものがありました。

また、「身土不二」の考え方は、「医食同源」にも通じます。

医食同源:病気を治す薬と食べ物とは、本来根源を同じくするものであるということ。食事に注意することが病気を予防することの最善の策である、また、日ごろの食生活も医療に通じるということ。(出典:三省堂 新明解四字熟語辞典)

私たちは、今こそ、「地元で収穫されるすばらしい食材」に目を向け、そこから「地域の良さの再発見」につなげることができれば、そこが「新ライフ・スタイル」の出発点となり得るのではないでしょうか。


The CAMPus のWEBサイト→https://thecampus.jp/compactagri


次回は、コロナ禍の今でも業績を伸ばしている「移動スーパー:とくし丸」について、スポットを当ててみたいと思います。

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