「新・農業」をデザインする先駆者たち ①

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

今回は、川内イオ 著 「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」《文春新書 出版》を参考に「drop farm」の三浦綾佳氏(以下、三浦氏)にスポットライトを当てたいと思います。

以下、太字は引用文です。

最初に「パッケージデザイン」に着手…!

三浦氏は2015年に茨城県で農業法人「drop farm」を設立しました。農場では、フルーツトマトが生産されています。

初めて農業をする人であれば、販売できる農産物を生産することを第一の目標とするのが一般的ですが、三浦氏は違いました。フルーツトマトを生産すると決めたあと、最初に考えたのは何とネーミングとパッケージデザインでした。

私はその斬新な「思考方法」に驚きを隠せないのと同時に、ある受験指導校の学院長の言葉を思い出しました。

それは「勝ってから、斬る!」という言葉です。

勝ってから、斬る

どんなに勉強しても、能率が上がらない。本試験のことを考えると、不安が募る。どうすればよいか。

〈×:すべる人〉

1)「勉強(斬る)→合格する(勝つ)」と、考える。
2)闇雲に予習したり、答練を受ける。

〈〇:受かる人〉

1)「合格する(内なる勝利をする)→勉強する(斬る)→合格する(外なる勝利をする)」と、考える。
2)まず、「受かる」という気迫をもつ。次に、“合格に必要なだけの勉強”をする。

参照:成川豊彦氏(スクール東京 最高名誉顧問)ブログ

勝ってから、斬る | 成川豊彦日記 (goukakublog.com)

意味合いは少し違うかもしれませんが、三浦氏の販売にかける並々ならぬ意気込み、自信、覚悟を感じ取れます。

そして、このネーミングとパッケージデザインは、融資を受ける際にも「大きな役割」を果たすことになります。

ネーミングとパッケージデザインで合計4,500万円の融資を勝ち取る…?!

drop farm」はフルーツトマトを生産するにあたり、アイメック(R)システムという農法を採用しています。

三浦氏は「drop farm」をスタートさせるにあたり、青年等就農資金から3,700万円の融資を受けましたが、鉄骨用のハウスの建設、アイメック(R)システム等の導入で4,500万円の資金が必要でした。不足分の800万円を銀行から借りれなければスタートすらできない困難な状況です。

農業未経験で実績ゼロの農業者が合計4,500万円もの融資を受けることは至難の業。この難局を乗り切るため、三浦氏は奇策を講じます。

まだ融資が決まっていない段階で、『ドロップファームの美容トマト』で商標登録して、そのブランドでデザインしたパッケージも持って行ったんです。それで、融資の担当者に『ここに甘いトマトを入れて売るだけです。』と訴えました。

<同書 P56 より>

融資担当者には、この「販売にかける真の意気込み」が響いたのだと思われます。無事、4,500万円の融資を受けることができ、計画通りの建設等に漕ぎつけました。

なぜ、三浦氏はこういう考え方ができたのでしょうか。

それは、農業を始める前の三浦氏の経歴にあります。

三浦氏の経歴…、それは「販売のスペシャリスト」…?!

三浦氏は農業に携わる前までは、販売のスペシャリストでした。

短大を卒業してジーンズショップに就職し、同期の中ではトップクラスの売上を誇っていました。そのジーンズショップで一通りのものを売り終えると、もっといろんなものを売ってみたいとアルバイト職に転じ、そのイベント会社においても並々ならぬ売上を出していきます。

三浦氏は、(その商品の)魅力をどう伝えて、売るのか。お客さまとやり取りをしながら、その戦略を考えるのが楽しいと言っています。まさに、「販売のスペシャリスト」たる所以ですね。

そんな中、大手広告代理店に勤務していた夫と出会い、2012年に結婚し、翌年に夫婦で「広告代理店ドロップ」を設立する運びとなりましたが、子どもが生まれて子育てが始まると、この仕事をやり続けることが困難だと考えるようになります。子育てをしながら仕事ができる職業、そこに「農業」という文字が浮かび、2014年に出産後、ほどなくして出会ったトマトの新しい栽培方法「アイメック(R)」により農業の世界に踏み出し、現在の「drop farm」が誕生しました。

販売のスペシャリストである三浦氏だからこそ、融資時にパッケージデザインを持ち込んだ戦略が取れたのだと言えるかもしれませんが、その販売に力点を置く考え方には学ぶべきものがたくさんあります。

徹底した「店舗目線」&「消費者目線」

三浦氏には、本当に今の商品でお客様を満足させられているのかなというのは、自分で売ってみないとわからない、という思いがあります。

その言葉の通り、三浦氏は試食販売をしては

  • 品種の入れ替えが必要か?
  • パッケージのリニューアルが必要か?

など、売り場の状況を細かく分析するそうです。

また、百貨店とスーパーと直売所では、お客様が手に取るデザインが異なるため、三浦氏は同じ商品でも10種類のパッケージデザインを用意し、お客様の反応次第でブラッシュアップを繰り返しています。

今まで数多くの農業者は生産に傾注してきた中、ここまでパッケージデザインにこだわることが出来るのは、他の農業者がなかなかできなかった「マーケットイン」の最たる思考方法とも言えるでしょう。
マーケットイン:お客様の声に耳を傾け、困っていることや要求を知り、それらを解決する製品を市場に投入しようという考え方。

自ら販売し、消費者との距離が近ければ、その商品に対するお客さまの満足度も実感できる。このことは、生産する商品を考えるにあたっても「また、しかり」です。この「絶えず先を見据えた視点と素早い行動力」が、三浦氏の原動力と言えそうです。

三浦氏の「drop farm」における注目点として、他にも「女性の積極的採用」、「障がい者雇用」、「ICTの有効活用」、「6次産業化における他社商品の受託」等々、多岐にわたる素晴らしい取組みがあります。

おわりに

三浦氏の「drop farm」において、トマトづくりに携わっているスタッフのうち、その約半数が子育て中の女性と言います。その中には、月に3日ぐらいしか来ない人もいるそうです。

久しぶりに出社して来たスタッフでもスムーズに仕事ができるのは、「誰でも同じ作業ができるように栽培マニュアルを常に更新していたこと」にそのポイントの一つがありそうです。

スタッフが出社して来た時に「いつでも、気持ちよく働ける環境を提供できる。」ということは、簡単そうに見えても、実際はなかなかできることではないと思います。

子育て中の女性も生き生きと働ける「drop farm」、今後も大いに注目していきたいと思います。

 


ドロップファーム のWEBサイト→https://www.dropfarm.jp


次回は、「ビジネスパーソンの新・兼業農家論」(株式会社クロスメディア・パブリッシング出版)の著者でもある井本喜久氏にスポットを当ててみたいと思います。

 

 

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