「農業で幸せに生きる!」株式会社サラダボウルの取組みについて

みなさん、こんにちは。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

今回は、「農業で幸せに生きる!」を提唱してやまない株式会社サラダボウル、それもその創生期の時代にスポットを当ててみたいと思います。

「金融マンから農業マンへ」

株式会社サラダボウルは、田中 進氏(現在のサラダボウル代表)が創業された会社です。

田中氏はもともと山梨県の農家のご出身(次男)ですが、かつては、将来、農業をしようなんて微塵も考えていなかったそうです。そのため、大学卒業後、大手金融機関に入社し5年ほど勤務、その後、ヘッドハンティングされた外資系の大手保険会社に5年勤務することになります。ヘッドハンティングされた外資系の大手保険会社では、日々充実したビジネス生活を過ごしていましたが、ある時、どこか“違和感”があることに気づいたそうです。

「心の底から夢中になれるもの」を追い求め始めた頃に感じた“違和感”です。

自分が「心の底から夢中になれるもの」、それは「金融」の世界ではなく、「農業」の世界にあるのではないか。これがしばらくして分かった“違和感”の正体でした。

そして、「農業」に自分が金融マン時代に経験した他産業等のやり方を取り入れたら、これからの「農業」の世界は大きく変わるのではないかと考えるようになりました。

“やり方によっては、「農業」は大きく変わる!”

そう、そこには「大きなビジネスチャンスがある!」と確信した田中氏は株式会社サラダボウルを立ち上げることになります。「金融マン」から「農業マン」への華麗なる転身です。そして、早速、他産業からの“学び”を活かし始めます。

「徹底した整理整頓」~工具箱の廃止…?!

株式会社サラダボウルを立上げ、最初に選んだ作物はトマトでした。

そのトマトの農場で起きた出来事です。

トマト農場だけに限らないのですが、農作業をするための施設の整備、機械の調整等にはドライバー等の工具が必須になります。そして必要な工具一式を入れたものが工具箱という位置づけになります。通常、工具箱があれば、ほとんどの簡単な作業はそれだけでできてしまいます。でも、ここで田中氏はある事件(?)に遭遇することになります。

ある時、使おうと思った工具が、その工具箱に入っていなかったのです。そうするとその工具を見つけるために、直近で使っていたそうな人(Aさん)を探すことになります。やっと、Aさんを見つけたかと思うと、その工具は今、Bさんが持っているとのこと。まさに“いたちごっこ”です。そうこうしていると時間ばかりが過ぎてしまいます。そして、このようにして工具を探すことが1度や2度ではなかったのです。

“工具箱に必要なものが揃っていなかったら、工具箱の意味がない。”

田中氏は「工具箱の廃止」を決めました。

では、そうなると、工具の管理はどうしたのでしょうか。工具の管理は、農機具倉庫の壁面等を利用しました。壁面に板を張って工具掛けをつくり、工具を掛けた状態でその外形を板に描き、その工具が掛かっていない場合は、工具外形の線だけが残って見えるようになります。こうすることで、誰が見てもその工具の「有り・無し」が一目で分かるようになりました。そして、社員等は必要な工具だけここから持ち出し、使い終わった後は、必ずここに戻すようなルールにしたのです。それからというもの、「工具を探し回る事件(?)」から解放(快方?)され、作業効率も格段に上がりました。

これは、製造現場等で行われている整理整頓の徹底を農業に活用したものと言えます。

次に田中氏は、「農作業は、時として体への大きな負担を伴い、結果として多少の痛みが出ることもあり、痛みが出た場合はそれから湿布等を張って体のケアをする。」という、ごく当たり前とも思えるこの一連の流れに一石を投じました。

専門のトレーナーを招いた筋力トレーニング、ストレッチ

ヒントは、70代、80代の熟練生産者が行う、“特定の作業”の速さです。例えば、収穫した作物を軽トラックに積む作業等は、若者でも追いつかないようなスピードで熟練者の方はやってのけてしまいます。熟練者の中には、多少腰が曲がって作業されている方もいるのですが、それでも積み込むスピードは速いんです。田中氏はその動きについて、より深く観察してみました。そして、あることに気づきます。

「特定の作業に使う部分の筋肉が強いんだ!」

長年の農作業で鍛えられた筋肉が、あの積み込みのスピードを生んでいたのです。では、農作業経験の少ない若者はどうしたらいいか。

田中氏は考えました。

「農作業で使う特定の筋肉は、“筋力トレーニング”で鍛えればいいのではないか。」

早速、プロの専門のトレーナーを招き、特定の部位強化に主眼を置いた筋力トレーニングを始めます。効果は徐々に現れ、若者もかなりのスピードで作業ができるようになりました。そして、トレーナーには「ストレッチ」のやり方についても教えてもらうことにしました。当日の作業で疲れた体をほぐし、次の日に疲れを残さないための「ストレッチ」です。また、この「ストレッチ」には、腰痛予防対策にもなるという“おまけつき”です。

「農作業に効果的な筋力を前もって鍛え、痛みが出る前に日々の疲れのケアをする。」

まさにその“逆転の発想”は、田中氏が金融マン時代に育んだ柔軟な発想から生まれたものと言えるのではないでしょうか。

さて、トマトの生産も軌道に乗り始めた頃、田中氏は今の農業界に大切なしくみがないことに気づきます。

“育てる”しくみ…?!

まわりの農家の人を見ていると、とにかく忙しいのです。従業員を雇っている比較的規模の大きな農家でも、忙しさはさほど変わりません。

そして、特に忙しいのがその農家の“長”なのです。

考えて見れば、「農家の長」は、社長であり、営業部長であり、生産部門長を一人で兼務しているのと同じなのです。生産についても、難しい技術的な部分は、どうしてもトップの技術を持つ「農家の長」がやらざるを得なくなります。そうなると、忙しさに益々拍車が掛かることになります。「農家の長」は、自分の片腕になる人を何とか育てたいと思っているのですが、その時間が全く取ることができないのです。

「今の農業には、人を育てるしくみ(余裕)がない。」

このことに、田中氏は気づきます。

そして、これからの農業界に最も大事なことは、「ミドルマネージャー育成(人を育てられる人を育てる)」であることを確信します。「ミドルマネージャー育成」ができるしくみづくりが急務なのです。

サラダボウルのHPにも、「1,000人の農作業者ではなく、ひとりの真の農業経営者を育てたい。「人を育てる」のではなく、「人を育てる人」を育てたい。激動の時代を自らの手で切り拓き、将来の日本の農業をリードする真の経営者を育てたい。」とあるように、田中氏の思いが込められています。

そんな田中氏の大好きな言葉(ウィリアム・ウォード氏のことば)をここで紹介させていただきます。

平凡な教師は言って聞かせる。

良い教師は説明する。

優秀な教師はやってみせる。

しかし、最高の教師は子どもの心に火をつける。

 

《ウィリアム・ウォード(教育学者)》

今のリーダーが、これからの農業界を担っていく次世代のリーダーの心に火をつけることができたら、将来の農業界は魅力あるものとなり、成長産業の一つになる可能性を秘めています。農業が発展すれば、地域も豊かになります。

農業への熱い熱い思いを持った田中氏が代表を務める“株式会社サラダボウル”。

まさに「新しい農業のカタチづくり」の先駆者であり、その今後の動向に大いに注目していきたいと思います。


株式会社サラダボウルのWEBサイト→http://www.salad-bowl.jp


次回は、農業ITツールを活用して、大規模水田事業を営む「鍋八農産」を紹介させていただきます。

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