TOKYO MER 第5話 の備忘録

ども、ゆうたんです。

TOKYO MERの第5話です。

  • 私は医療を学んだことがないド素人であること。
  • 一部、ネタバレを含むこと。

上記2点にご注意の上、お読みいただけると幸いです。

登場人物

簡単に登場人物を確認しておきましょう。

<MER>

ドラマ内の都知事直轄の医療組織のメンバーです。

  • 喜多見チーフ・・・主役。スーパードクター。
  • 音羽先生・・・腕のいいドクター。官僚。
  • 比奈先生・・・研修医。
  • 夏梅さん・・・優秀な看護師。
  • ミンさん・・・看護師。
  • 冬木先生・・・麻酔科医。
  • 徳丸くん・・・臨床工学技士。
<その他>
  • 彩乃さん・・・36週目の妊婦さん。
  • 涼香さん・・・喜多見チーフの妹。
  • 天沼幹事長・・・MERを潰したがっている民自党幹事長。仮病で入院中。
ストーリー

第5話では、病院のエレベーターで音羽先生、天沼幹事長(車椅子)、涼香さん、彩乃さん(車椅子)の4人が閉じ込められます。音羽先生、天沼幹事長、涼香さんの3人は元気ですが、妊婦の彩乃さんは点滴から硫酸マグネシウム(早産の可能性がある場合に使用する薬剤)を投与していて苦しそうにお腹をおさえています。その様子を見た音羽先生は(官僚という立場上、天沼幹事長には逆らえませんが)、なんとかMERを出動させます。そんな中、地下の機械室で火災が発生、エレベーター内に煙が入ってきます。

エレベーター内の煙

作中の建物(病院)は、100㎡以下で準耐火構造のため排煙装置が設置されておらず、このままでは煙が充満してしまいます。煙が充満すると一酸化炭素中毒になってしまいます。

一酸化炭素中毒

火災が起こるということは何かが燃えているということです。そして燃えるためには酸素が必要になります。この酸素が不足して不完全燃焼を起こすと一酸化炭素が発生します。逆を言えば、酸素が十分にあれば不完全燃焼は起こりません。

一酸化炭素は血液の中の酸素を運ぶヘモグロビンと結びつきやすく、結びついてしまうとヘモグロビンが持っていた酸素がどっかにいってしまいます。すると体内に酸素を運ぶことができなくなります。(第3話のコラム参照)

一酸化炭素は無味無臭であるため、中毒になっても最初はあまり気づかず、次第に頭痛や吐き気を催し、手足がしびれ動けなくなり、最終的には意識不明になり死に至ります。

これらの症状については、血中の一酸化炭素濃度と相関する傾向にあると言われています(※1)。

  • 10%~20%:頭痛、吐き気
  • 20%超~30%:めまい、筋力低下、集中困難、判断力定価
  • 30%超:労作時呼吸困難、錯乱
  • さらに高濃度になると、失神、痙攣発作、意識障害。
  • 60%を超えてくると、低血圧、昏睡、呼吸不全、死亡の可能性。

一酸化炭素中毒では、高気圧酸素療法が最も有効な治療とされています(※2)。高気圧酸素治療とは、通常の大気圧よりも高い気圧環境の中で酸素を吸入させる治療です(※3)。

今は夏休み期間です。キャンプなどに行くかもしれませんが、テント内でカセットコンロ等を使うのは自殺行為なので絶対にNGです。

また、今回のように煙が充満しそうな環境下では、鼻と口を押さえて低姿勢になるのが鉄則です。


救助活動が進む中、彩乃さんの情報がMERに共有されます。36週目の初産婦で妊娠高血圧症および子宮頸管長の短縮が認められ、2週間前から入院。数日前から血圧コントロールが悪く、翌日に帝王切開の予定でした。

それらの情報を得た喜多見チーフは次の指示をします。

  • 酸素吸入器
  • 点滴
  • 胎児ドップラー
  • 簡易オペセット

胎児ドップラーとは、お腹にあてて赤ちゃんの心音を確認するための機械です。(ドップラーについては第4話のコラム参照)


一刻も早く酸素吸入器を渡すためレスキュー隊が5階のメンテナンス口から1階にあるエレベーターのカゴの天井に到着しますが、まだ引き上げは行われません。そしてレスキュー隊から音羽先生に次のものが渡されます。

  • 片手で持つタイプの酸素吸入器
  • 医療セット(胎児ドップラーなど)
  • カルテ(彩乃さんの情報)
  • イヤホンマイク

音羽先生がカルテを確認しているタイミングで彩乃さんが破水してしまいます。音羽先生はレスキュー隊に喜多見チーフへ破水して陣痛がきている旨の伝言を頼みます。

破水後の対応

レスキュー隊が来たにも関わらず助けてもらえなかった天沼幹事長は荷物を蹴散らします。そんな天沼幹事長を横目に音羽先生は手袋をつけて触診を行います。そして、小声で涼香さんに「イヤホンマイクを見つけて喜多見チーフに臍帯脱出する可能性があると伝えてください」と言います。しかし、煙で視界も悪く荷物が蹴散らされたためイヤホンマイクが見つかりません。涼香さんはとっさに監視カメラに向かって指文字で「さ・い・た・い・だ・っ・し・ゅ・つ」と伝えます。

臍帯脱出

まず、妊娠中の子宮内のイメージと胎盤の構造をご覧ください。

臍帯とは「へその緒」です。母体⇔胎盤⇔臍帯⇔胎児と繋がっており、このルートで胎児に酸素や栄養が届き、また胎児の老廃物を排出しています。臍帯は胎児にとって、まさしく命綱ということです。

通常、胎児が先、臍帯が後という順番で膣外へと出ます。

しかし

  1. 羊水が多い
  2. 臍帯が長い
  3. 子宮下部の閉鎖が不完全

などの場合、破水と同時に臍帯が先に出てきてしまうケースがあります(※4)。これを臍帯脱出と言います。臍帯脱出が起こると臍帯が圧迫されるため、胎児に血液(酸素)が届かなくなります。
後に出てくる喜多見チーフのセリフでは「臍帯脱出したら赤ちゃんは10分ともたない」らしいです。

作中ではあまり重要視されていませんでしたが、音羽先生が見ていたカルテに一瞬「頸管長19mm」という表記が映っていました。通常は35~40mmらしい(※5)ので、臍帯脱出の原因は上記3だったのかもしれません。


涼香さんの指文字を読み取った喜多見チーフは夏梅さんと比奈先生に次の指示を出します。

  • 緊急帝王切開用の手術セット
  • 新生児用の蘇生セット
  • インサイズドレープ
  • 大きめのタオル
  • 新生児用のケアセット
清潔/不潔の区別、ドレープ

医療現場では、滅菌や消毒がされているかどうかで「清潔」と「不潔」が区別されています。たとえ新品のものであっても滅菌されていなければ不潔として扱われます。また、清潔な手袋をつけていたとしても、滅菌されていないものをさわれば、その手袋は不潔になります。清潔な場所と不潔な場所を区別するのに使われるのがドレープです。

実際の医療現場でどんな風に呼ばれているのかは知りませんが、少なくとも私は「ドレープ」のみであれば、手術台で寝そべっている患者の体に布団のようにかぶさっている水色のシートのヤツを思い浮かべます。術野部分にだけ穴が開いているヤツです。一方「インサイズドレープ」の場合、薄いフィルムシールのようなものを肌に直接貼り付け、その上からメス等で切開することで皮膚の常在菌を切開部分に侵入させず術中感染を防止するタイプのを思い浮かべます。

音羽先生の判断

彩乃さんが臍帯脱出していることを知った喜多見チーフは先ほどのレスキュー隊のように自分がエレベーターのカゴまで降りていき、エレベーター内で緊急帝王切開をすると宣言します。しかし、天沼幹事長とズブズブな関係の人間に「直接 患者を診ていない喜多見先生の判断は不確実です。ムチャなオペをするよりも重病人である天沼先生を引き上げることを最優先に考えるべきです」と茶々を入れられます。そこで、喜多見チーフは音羽先生に、彩乃さんと天沼幹事長のどちらを優先すべきか判断を委ねます。
胎児心拍が100を切り続けていることを確認した音羽先生は、天沼幹事長から「お前の官僚人生は終わるぞ」と脅されながらも彩乃さんを優先することを決断します。

心拍数

健康な成人の安静時における1分間の心拍数は、およそ60bpm~100bpmなのに対し、胎児の心拍は110bpm~160bpmで、成人に比べて格段に速いです。
この基準値よりも速いことを頻脈(頻拍)、遅いことを徐脈と表現します。
基準値から外れ、頻脈や徐脈になると呼吸機能や循環機能のトラブルになっている可能性があり、作中のセリフでは胎児で100bpm以下は仮死状態と言ってました。

帝王切開術

通常の帝王切開のざっくりとした流れは下図のようになります。

切り方によりそれぞれ名称があります。

  • Pfannenstiel切開(ファンネンスティール)・・・恥骨上2cm程度の部分を横切開する、傷跡が目立ちにくい。
  • 正中切開・・・おへその下から縦に真っすぐ切る、術野が広くトラブルにすぐ対応できる。
  • Joel-Cohen切開(ジョエルコーエン)・・・皮膚切開以外メスなど使わず医師たちの指のみで下腹部を横切開する(※6)。
  • Maylard切開(メイラード)・・・腹直筋および腹膜を横切開する、肥満など術野が十分に確保できない場合に有用(※7)。
おわりに

MERを潰したがっている政治家の下についている医系技官(医師資格を持った官僚)の音羽先生が政治家の指示を無視して目の前の命を助けるというカッコイイ回でした。こういう展開は私の大好物です。

今回のTOKYO MERを見て、私が出産したとき(19年前と16年前)はどうだったかなぁ~?と思い出してたのですが、そういえば長女のときは陣痛5分間隔で、二女のときは陣痛7分間隔で来院するよう言われていたのに、2人とも気づけば陣痛3分間隔で慌てて病院に行ったことを思い出しました。あと、長女を出産して数時間後に病院内で走ってたら看護師さんに「元気やなー」と注意されたのも思い出しました。

※1 MSDマニュアル https://msdmnls.co/3stO9Nv
※2 東京医科歯科大学医学部附属病院 高気圧治療部 https://bit.ly/3CUYUNH
※3 医療法人徳洲会 松原徳洲会病院 https://bit.ly/3z3vWc8
※4 医療法人倖生会 身原病院 https://bit.ly/3mbO0gv
※5 ユニ・チャーム株式会社 https://bit.ly/3AUu0TK
※6 新潟産科婦人科学会誌 第109巻 第1号 https://bit.ly/2XFyMq0
※7 日産婦誌59巻9号 https://bit.ly/3D2vtcs

執筆者:鍛治田 祐子(ゆうたん)

IT業を経てFPに。コラムでは多岐にわたる内容を執筆中。
【一言メッセージ】数年前に母親から38年前の私の臍帯が送られてきましたが、どうしたらいいの?

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