TOKYO MER 第3話 の備忘録

ども、ゆうたんです。

TOKYO MERの第3話です。

  • 私は医療を学んだことがないド素人であること。
  • 一部、ネタバレを含むこと。

上記2点をご理解いただいた上でご覧ください。

登場人物

簡単に登場人物を確認しておきましょう。

  • 喜多見チーフ・・・主役。スーパードクター。
  • 音羽先生・・・腕のいいドクター。
  • 比奈先生・・・研修医。
  • 夏梅さん・・・優秀な看護師。
  • ミンさん・・・看護師。
  • 冬木先生・・・麻酔科医。
  • 徳丸くん・・・臨床工学技士。

そして頻出キーワードとして「ERカー」がありますが、これは作中に出てくる手術ができる車のことで、上記の登場人物はこの車に乗って現場へ向かいます。

腹腔内拍動性出血の女性

第3話の現場は雑居ビル2階にある飲食店での立てこもり事件です。銃を所持した男が幼女を人質に立てこもり、従業員ほか複数名が負傷している状態でした。喜多見チーフが現場でトリアージを行います。女性従業員の傷口を確認し「1名 緊急オペ行います」と宣言します。その女性は左上腹部に刺創があり、腹腔内で拍動性出血と思われる状態で、出血性ショックを起こしています。

  • 刺創・・・ナイフやアイスピックなどによる刺し傷のこと。
  • 拍動性出血・・・心臓の動きに合わせて噴き出る出血。
  • 出血性ショック・・・大量出血による臓器障害。
輸血(急速加温輸血)

喜多見チーフはすぐさま冬木先生と徳丸くんへ輸血に関する指示を出します。

私が初めて急速加温輸血について知った時、なぜ加温する必要があるのか気になり、調べたことがあります。どうやら輸血に用いる赤血球製剤は低い温度で保存されているらしく、今回のような大量輸血が必要な場合において、そのままの温度で輸血すると低体温になるからだそうです。低体温は不整脈や心停止の引き金になる可能性があります。そのため、大量輸血時には、あたためてから輸血する必要があります。各種輸血製剤の保存温度は、赤血球製剤が2℃~6℃、血漿製剤はー20℃以下、血小板製剤は20~24℃(要振とう)だそうです(※1)。なお、レベル1というのは、ただのシステム名だと思っておけばいいでしょう。

ライン(ルート)の確保

立てこもり犯からの発砲をかわしながら女性を抱きかかえてERカーへ運ぶ喜多見チーフ。ERカー到着後、「輸血用に18Gでライン確保して…あと ショック状態だからAラインを入れてください」と冬木先生に指示を出します。

18G(18ゲージと読みます)とは、注射針の太さの一種です。看護roo!のサイト(※2)によると、次のように太さを使い分けるのが一般的らしいです。

  • 17G~18G・・・献血で使用される注射針
  • 21G~23G・・・通常の採血や点滴で使われる注射針
  • 26G〜27G・・・局所麻酔や予防接種など、薬液の皮下注射

数字が大きいほど、針は細くなります。

ライン(またはルート)というのは、血管までの道だと思えばいいでしょう。輸血や点滴などを行う際に体外から血管への道を確保する必要があります。

AラインのAとは動脈(Arterial)を意味します。静脈はV(Venous)です。

なお、ライン確保には下記2つの方法があります。

  • 経皮穿刺法・・・血管に針を刺す
  • カットダウン法・・・血管が見えるように切り開く

静脈は皮膚からうっすら見えるのに対し、動脈は見えません。その結果、動脈を経皮穿刺法で行う場合は「脈ふれてるから多分この辺りだろう」とエイ、ヤー!で刺すことになります。ただ、皮下脂肪が多い患者や医師が慣れていない場合、時間がかかるかもしれません。緊急時に時間がかかっていては患者の命に関わります。血管の場所が分からないなら、血管を目視できるように切り開けばいいじゃない!というのがカットダウン法です。


ERカーでの手術が開始され次のような会話が繰り広げられます。

喜多見チーフ「大網の動静脈が3カ所切断されて出血しています。血圧は?」
冬木先生「64の40です」
ミンさん「サチュレーション測れません」
喜多見チーフ「夏梅さん・・・」
夏梅さん「ペアンと3-0絹糸ですね」
喜多見チーフ「ですね。クーパーもらっちゃいます。ペアン。」
夏梅さん「はい」
喜多見チーフ「比奈先生、結紮で」
比奈先生「はい。3-0絹糸 お願いします」

  • 大網・・・胃の下側(大弯)から下方へエプロンのように腸の前に垂れ下がった腹膜のこと(※3)
  • サチュレーション・・・動脈に含まれる酸素の飽和度のこと
  • 結紮・・・血管を縛って止血すること(クランプとの違いは第1話のコラムを参照)
  • 3-0・・・糸の太さのこと(3-0は直径0.2mmぐらい)
サチュレーション(SpO2)

ここではサチュレーションに注目します。日本語にすると「経皮的動脈血酸素飽和度」です。つまり、皮膚の上から動脈に含まれる酸素の飽和度を測る、ということです。実際の測定時には、指先にクリップのような形をしたパルスオキシメータをつけます。

酸素の飽和度について、もう少し噛み砕きましょう。

体内のあらゆる細胞には酸素が必要です。血液にはヘモグロビンと呼ばれるヤツがいます。ヘモグロビンは肺から酸素を受け取って体内のあらゆる細胞に酸素を届けます。サチュレーションというのは「血液がちゃんと体内に酸素を運べているか」を測っています。(「はたらく細胞」という漫画を見ると非常にイメージしやすいと思います)

私はパルスオキシメータを使ったことがないので、どの程度まで測れるのかは知りませんが、一般的に90%を下回ると医師たちが焦りだすと思います。

Ⅰ型糖尿病の人質

腹腔内拍動性出血の女性は、人質のお母さんでした。そして立てこもり犯の男は人質のお父さんでした。どうやら夫婦間でトラブルがあったようです。

手術後、目を覚ましたお母さんは喜多見チーフ達に娘がⅠ型糖尿病であることを打ち明けます。さらにインスリンを打った直後に立てこもり騒動が起きてしまったために食事をしていないことも説明します。喜多見チーフのヒアリングにより過去に低血糖発作を起こしたことも判明します。その時通っていた病院が喜多見チーフ達の所属する病院だったため、至急カルテデータを共有してもらいます。

カルテデータには次のようなことが書かれています。

低血糖発作回数:過去3回(うち2回は入院)
アレルギー:アーモンド(過去にアナフィラキシーショックを起こし、エピペン携帯中)
治療薬:インスリン(グラルギン・アスパルト)、アレグラ、ロキソニン
現行治療:食事療法・運動療法、インスリン療法(グラルギン・アスパルト使用)

Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病

糖尿病にはⅠ型とⅡ型があります。

  • Ⅰ型糖尿病・・・β細胞(インスリンを作り出す細胞)が破壊され、膵臓でインスリンが分泌されない状態。
  • Ⅱ型糖尿病・・・膵臓でインスリンが分泌されるも、量が足りない(インスリン分泌不全)または作用しない(インスリン抵抗性)状態。運動不足や過食など自身の生活スタイルが原因となることが多い。

インスリンは血糖値を下げる働きをします。糖尿病患者は、血糖値を下げられない体なので食事の前には必ずインスリンを注射します。しかし人質の女の子は、グラルギンやアスパルト(いずれも速効型のインスリン)を注射したにも関わらず食事をしていないため、血糖値が下がりすぎて低血糖の発作を起こす危険性が高まっている状態です。その発作が起こると冷や汗、動悸、けいれん、意識障害などの症状が出て、放っておくと死に至ります。


店内で犯人が人質の女の子に「これでも食っとけ」な感じでチョコ菓子を与えている頃、ERカーでは早く血糖値をあげるべく喜多見チーフは次のように指示します。

  • 50%のブドウ糖 20cc 2本
  • グルカゴン1バイアル
  • 血糖測定器

準備をしているタイミングで、犯人が窓から顔をだし「娘が倒れた!早く母親を連れてこないと娘が死ぬぞ!」と叫びます。しかしお母さんは、頻拍、頻呼吸、血圧低下、ARDS(急性呼吸窮迫症候群=呼吸不全をきたす病気)の可能性があるため病院へ搬送されます。警官が犯人に血糖値をあげるための注射を持っていきたい旨を伝えるも「警察は近づくな」と言われてしまいます。喜多見チーフが店内に行こうとするも警察だと疑われ、結局夏梅さんが店内に入ることに。

店内に入った夏梅さんが人質の女の子の指先に注射針のようなもの(血糖値を測定するジェントレット?)を刺し、その後ブドウ糖を腕から注入しますが容態が良くなりません。呼吸がヒューヒューと浅く、首筋が赤くなってます(蕁麻疹?)。

その容態を確認するとすぐさま夏梅さんは犯人に「何か食べさせた?」と問い詰めます。犯人が夏梅さんにチョコ菓子を渡すと原材料名にアーモンドパウダーの文字。カルテデータを思い出した夏梅さんはアナフィラキシーショックだと判断します。

犯人に銃を突き付けられながら窓から顔を出す夏梅さん、「アナフィラキシーショックを起こして呼吸困難を起こしかけています。アドレナリンを持ってきてください!」と叫びます。

その後、警察からの電話により犯人が人質の女の子と夏梅さんから離れます(アナフィラキシーショックの症状をおさえるエピペンを探しにいった)。その隙に夏梅さんと女の子は建物から逃げ出します。逃げ出したことに気づいた犯人は窓から発砲。夏梅さんを誘導していた警官が撃たれてしまいます。夏梅さんは両手で警官の損傷箇所を抑えながら「左鎖骨下動脈損傷の疑い!あと30分ほどです!」と叫びますが、犯人に「戻ってこい!」と銃を向けられたため、その警官を放置して再び店内に戻る羽目になりました。女の子はERカーに運ばれます。

アナフィラキシーショックの処置

夏梅さんが再び犯人のいる店内に戻っている間、ERカーでは女の子を救うべく喜多見チーフの指示が飛びます。アナフィラキシーショックは血圧低下と気管狭窄が同時に起こるため、一刻も早い対処が必要です。

  1. 末梢点滴ラインから急速輸液<音羽先生>
  2. クロルフェニラミン10mg 1ショット<音羽先生>
  3. モニター準備<ミンさん>
  4. アドレナリン0.3mg 大腿に筋注<比奈先生>
  5. 酸素8リットル<冬木先生>
  • 1:末梢点滴→手に針を刺す点滴
  • 1:輸液→何かしらの液体を血管内に入れること
  • 2:クロルフェニラミン→抗ヒスタミン(※4)(「過去のコラム」も参照)
  • 4:第1回のコラム心停止だったが、アナフィラキシー時にもアドレナリンを使う
  • 4:大腿に筋注→太ももに筋肉注射

喜多見チーフが手術台に立ってからの様子は次の通り。

  1. ひどい狭窄音があり酸素化も換気もできない
  2. 気管支がスパズム
  3. サチュレーション70
  4. 挿管
  5. 換気できず
  6. サチュレーション62
  7. 血圧72/40
  8. アドレナリン1筒を生食で10にして気管内投与
  9. 換気OK・サチュレーション96
  • 1:気管がせまくなっていて強制的に酸素を送り込もうとするが入らない、という意味。(酸素化=息を吸うこと、換気=息を吐くこと)
  • 2:スパズム→収縮してしまうこと。攣縮(れんしゅく)。
  • 3:気管挿管のこと。気道を確保するために気管チューブを口から入れる(※5)
  • 8:アドレナリンを生理食塩水で希釈して気管チューブから入れる、という意味。(10にして、の意味は分かりませんでした…アドレナリン1mlに生理食塩水9mlで合計10mlにする、という意味でしょうか?)
左鎖骨下動脈損傷の警官

女の子の術後、喜多見チーフが無線で撃たれた警官とコンタクトをとります。左手は動かせるが痺れている状態です。警官が倒れているところまでERカーで近づきます。喜多見チーフが比奈先生に「大量輸血プロトコールでA型プラスの濃赤FFP血小板、それぞれ20単位ずつ用意してください」と指示します。ERカーに運ばれた警官の血圧は84/60です。「胸骨正中切開 左開胸で縦隔と肺、鎖骨下動脈を検索する」と宣言します。

輸血(大量輸血プロトコール)

宣言後、負傷した警官になんやかんや色々処置をしていましたが場面があちこち切り替わって全く分からなかったので、事前に指示していた大量輸血プロトコールに注目したいと思います。
大量輸血プロトコールとは、赤血球濃厚液新鮮凍結血漿濃厚血小板の比率が 1:1:1 となることを目標に早期に輸血することを意味します。
大量出血に伴う輸血について調べていたら「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン」(※6)なるものをみつけましたので気になる方は確認してみてください。

おわりに

今回はストーリーを伝えながらでないと、説明できず、かなりネタバレを含んでしまったような気がします。夏梅さんが大活躍する回でした。夏梅さんがカッコよすぎて鼻血でそうです。

参考

※1 日本赤十字社 https://bit.ly/3k17pOq
※2 株式会社クイック 看護roo!用語辞典 https://bit.ly/37JiaiP
※3 Wikipedia https://bit.ly/3AHGQoo
※4 株式会社メドレー https://bit.ly/2VToWjl
※5 YouTube 羊土社臨床医学動画チャンネル https://bit.ly/2VXcAHo
※6 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 https://bit.ly/3ALZCLq

 

執筆者:鍛治田 祐子(ゆうたん)

IT業を経てFPに。コラムでは多岐にわたる内容を執筆中。
【一言メッセージ】Ⅱ型糖尿病になりそうでこわい・・・。

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