農福連携の新たなる取組み

初めまして。「新しい農業のカタチづくり」を目指している椴 耕作です。

先日、農福連携に取組んでおられる静岡県の農業法人「京丸園株式会社」社長の鈴木厚志氏のお話を聞き、「障がいを持つ社員の受け入れ方」について大きなヒントを得ましたので、それをシェアしたいと思います。

障がい者に伝わる作業指示

みなさん、「農福連携」と聞くと、福祉的な思いで障がい者の方を社員として受け入れているというイメージがありませんか。

私も、鈴木社長のお話を聞く前までは、まさにそんなイメージでした。
ただ、鈴木社長のお話を聞くと、「まさに、目から鱗」でした。

鈴木社長と障がい者の方との出会いは、25年前に遡ります。

京丸園は、障がい者施設から、重い障害を持つ一人の若者の研修を受け入れました。

鈴木社長は、「このトレイをきれいに洗っといて」と仕事を頼み、出かけました。
約1時間後戻ってくると、その若者は1枚目のトレイをまだ洗い続けていました。
「これじゃ、だめだ」と思った社長は、施設長へ別の人に交代して来てもらうようすぐに電話を入れました。

社 長:「このような人は、うちで雇うわけにはいかない。誰か他の人をお願いしたい。」

施設長:「ところで、社長はどういう指示を出されたのですか。」

社 長:「『このトレイをきれいに洗っといて』と言いました。」

施設長:「それは、作業指示とは言わない!作業指示とは、例えば、『このブラシでこういうふうに6回こすったら、だいたいきれいになるので、そうしたら、次のトレイを洗う作業に移ってください。同じことを繰り返して、ここに置いてあるトレイ全部を洗ってください。』というのが作業指示だ!」

と逆に怒られたそうです。

鈴木社長はこの時に気づきます。
いかに今まで、自分が社員全体に対しても具体的な指示ができていなかったことに・・・。

鈴木社長は、本当の「作業指示」とはどういうものか、障がい者の方を受け入れることによって教えてもらったのです。
同時に、農業界の「指示」が、いかに曖昧なものであったかについても痛感させられました。

これが、「農福連携で人も企業も幸せになる」京丸園のスタートです。

京丸園さんは、障がい者の方を受け入れるにあたって、数々の先進的な取組みをされています。

今日は、あと一つだけご紹介させていただきますね。

障がい者雇用で飛躍する企業

障がい者と言っても、京丸園さんが雇用されている方は、比較的重度な方も多く、まっすぐ歩くこともままならない方もいらっしゃいます。

障がい者の方を受け入れ、部門に配属する際、社長は部門長にこう指示するそうです。

社 長:この子が働けるような作業環境を作ってくださいね。部門全体の作業効率も下げたらいけません。そうできるように、「あなた達が変わりなさい!」

社長の目線の先にあるのは、会社全体の社員が働きやすい職場になること。
障がい者の方が気持ちよく働ける環境、それは、一般社員の「働きやすさ」に直結します。
そして、このような職場環境であれば、90歳の人でも働ける農業経営体になることも不可能ではありません。

また、必要に迫られて一から作業工程を見直していた際、思いも寄らなかった「作業方法」が生み出されています。
今まで手の器用な人(熟練者)しかできないと思われていたことが、「作業を細分化し、ある道具を使う」ことによって、特殊な技能を持たない初心者でもできることが証明されたのです。

鈴木社長は、「障がい者雇用のおかげで、私たちは飛躍した!」とおっしゃっています。

だから、どんなに大変でも、「1年に1人、障がいを持った人を雇おう!」という取組みを今も続けていらっしゃいます。(社員99名中、24名が障がい者雇用)

また、鈴木社長は「強い農業」とは、ワークバランスのいい組織、すなわち、いろんな世代の働き手がいて、「次の時代に、技術と農地を渡せる農業」と位置づけていらっしゃいます。

京丸園さんの取組み、私たちがこれからの「働き方」を考える上で、多大なるヒントを与えてくださっているよう思います。


今回ご紹介させていただいた京丸園さんは、水耕栽培(姫ねぎ、姫みつば、みにチンゲン等)を主に生産されている農業法人です。

京丸園さんのWEBサイト → https://kyomaru.net


※次回は、トヨタ自動車の豊田社長も師の一人と仰ぐ「伊那食品工業株式会社 最高顧問 塚越 寛 氏」が提唱する「年輪経営」にフォーカスしてみたいと思います。

 

 

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